プラチナ価格が急騰している現状
2025年に入ってから、プラチナ価格は劇的な上昇を見せています。
2023年12月に1グラムあたり4,000円台後半まで下落していたプラチナは、2025年12月には1万2,000円台に到達し、わずか2年で約3倍近くにまで価格が跳ね上がりました。
この急激な価格上昇は、長らく金の陰に隠れていたプラチナが、投資家や産業界から再び注目を集めていることを示しています。
「金よりも希少なのに、なぜ安いのか」と疑問視されていたプラチナが、ついに本来の価値を取り戻しつつあるのです。
プラチナ価格が上昇した5つの主要因
構造的な供給不足が深刻化
プラチナ価格上昇の最大の要因は、世界的な供給不足です。
プラチナの産出量は世界の約7割を南アフリカ共和国が占めており、この供給構造が価格上昇を引き起こしています。
南アフリカでは慢性的な電力不足、鉱山労働者の問題、インフラの老朽化などが長期化しており、生産量が安定していません。
2025年2月には洪水被害によってアマンデルブルト鉱山での生産に影響が出るなど、自然災害による供給リスクも顕在化しています。
専門機関のWPIC(World Platinum Investment Council)によると、プラチナ市場は3年連続で供給不足となっており、2025年には966キロオンスの供給不足が予測されています。
この構造的な需給逼迫が、価格を押し上げる大きな圧力となっているのです。
中国における宝飾品需要の急増
中国市場でのプラチナ需要拡大も、価格上昇の重要な要因です。
WPICの調査によると、2025年の中国におけるプラチナ宝飾品需要は前年比15%増加し、474キロオンスに達する見通しです。
この背景には金価格の高騰があります。金が歴史的な高値で推移する中、消費者が金製品を購入しづらくなり、中国の宝飾品メーカーや小売店が相対的に手頃な価格のプラチナ製品へとシフトしているのです。
特にメンズジュエリーやユニセックスデザインの人気が高まっており、ライブ配信プラットフォームでの販促活動も需要を後押ししています。
金との価格差による投資妙味
金価格の急騰により、プラチナの割安感が際立っています。
金とプラチナの価格比率を示す「金・プラチナ倍率」は、2025年8月時点で1.2倍付近で推移しており、金と比較してプラチナが割安であることを示しています。
歴史的に見ると、プラチナは金よりも高く取引されていた時期もあり、希少性を考慮すると現在の価格水準は依然として割安との見方が強まっています。
この割安感が投資家の注目を集め、ETF(上場投資信託)などを通じた投資マネーがプラチナ市場に流入し、価格を押し上げる一因となっています。
パラジウム代替需要の拡大
自動車産業において、高騰したパラジウムの代替としてプラチナを使用する動きが加速しています。
パラジウムの価格が高騰したことを受け、コストを抑えるために排ガス触媒にプラチナを採用する自動車メーカーが増えているのです。
重要なのは、いったん車種でプラチナへの切り替えが決定されると、その車種が生産される期間(通常7年間)はプラチナ需要が継続的に発生するという点です。
この代替需要は一時的なものではなく、中長期的なプラチナ需要を支える要因となっています。
水素社会への期待と将来需要
脱炭素社会の実現に向けて、水素エネルギー分野でのプラチナ需要拡大が期待されています。
プラチナは水素燃料電池車(FCV)の触媒として、また水素を製造するPEM型水電解装置の電極触媒として不可欠な素材です。
WPICの予測によると、水素関連のプラチナ需要は2040年までに年間需要の35%を占める可能性があるとされています。
中国は2030年までに燃料電池車100万台の生産を計画しており、日本でもNEDOが2030年に国内でのFCV普及台数80万台を目標としています。
この水素社会への移行は、電気自動車の普及で減少する排ガス触媒需要を補って余りある新たな需要を生み出すと期待されているのです。
リサイクル供給量の伸び悩みも影響
プラチナの二次供給(リサイクル)が思うように増えていないことも、供給不足を深刻化させています。
プラチナは廃車から回収される排ガス触媒からリサイクルが可能ですが、自動車製造技術の向上により車の寿命が延びているため、リサイクル素材の供給が伸び悩んでいるのです。
現在リサイクルされているプラチナは約20年前に生産された車両からのものであり、2025年時点でのリサイクル量は年間約37トン、自動車触媒向け需要の約35%にとどまっています。
この二次供給の限界も、構造的な供給不足に拍車をかけています。
2026年以降のプラチナ価格見通し
短期的には高値圏での推移が想定される
2026年1月時点では、プラチナ価格は一旦落ち着きを見せる可能性があります。
2025年12月の急騰の反動として、利益確定の売りが出やすい局面となっているためです。
しかし、世界的な供給不足が続いていることや、中国を中心とした需要が底堅いことを考えると、価格が急激に下落する可能性は低いと考えられます。
高値圏を維持しながら、次の方向性を探る展開になりやすい局面といえるでしょう。
中長期的には上昇トレンドが継続する見込み
中長期的には、プラチナ価格は上昇する可能性が高いと予想されます。
その理由は以下の通りです。
供給制約の継続: 南アフリカを中心とした主要産出国での生産問題は短期的には解決が難しく、構造的な供給不足は今後も続くと見られています。
水素関連需要の本格化: 短期的には電気自動車の普及による触媒需要の減少が懸念されるものの、2030年代に向けて水素燃料電池車や水素製造装置での需要が本格化すれば、新たな大口需要が生まれます。
投資需要の拡大: 金に対する割安感が強く、分散投資先としてのプラチナの魅力は今後も継続すると考えられます。
プラチナ投資を考える上での注意点
価格変動リスクに注意
プラチナは工業用需要が大きいため、景気動向に左右されやすい特徴があります。
世界経済が減速すれば、自動車生産の減少などを通じて需要が弱まる可能性があります。
また、2025年には需給の逼迫を背景にリースレートが急上昇する場面も見られ、値動きが大きくなりやすい状況です。
政策リスクへの配慮
米国の関税政策の変更など、突発的な政策変更によって市場心理が不安定になることもあります。
実際に制度変更が行われなくても、先行き不透明感が強まると価格が振れやすくなる点には注意が必要です。
供給サイドのリスク
主要産出国の政情不安、物流ルートをめぐる問題、自然災害などが発生すれば、供給面に新たな混乱が生じる恐れもあります。
南アフリカへの依存度の高さは、常にリスク要因として意識する必要があります。
プラチナの価値がなくなることはない
「プラチナの価値がなくなるのでは」という懸念を持つ方もいるかもしれませんが、現実的にはその可能性は極めて低いといえます。
プラチナの年間生産量は約200トン弱で、金の約15分の1に過ぎません。
有史以来の総生産量でも7,200トンと、金の26分の1以下という圧倒的な希少性を持っています。
さらに、プラチナ需要の約70%は自動車産業をはじめとする工業用需要です。
化学的に安定した触媒作用を持つプラチナは、代替が難しい産業材料として今後も欠かせない存在であり続けるでしょう。
プラチナ投資の方法
個人投資家がプラチナに投資する方法は主に以下の3つです。
現物投資: プラチナ地金(インゴット)やコインを購入する方法。実物を保有する安心感がありますが、保管コストや盗難リスクがあります。
プラチナ積立: 毎月一定額をプラチナに投資する方法。少額から始められ、ドルコスト平均法により価格変動リスクを抑えられます。
ETF投資: 証券取引所に上場しているプラチナETFを購入する方法。株式と同様に売買でき、流動性が高いのが特徴です。
まとめ:プラチナ価格上昇は構造的要因に支えられている
プラチナ価格の上昇は一時的なブームではなく、構造的な供給不足、新興国での需要拡大、水素社会への移行という中長期的なトレンドに支えられています。
2026年に入って短期的な調整局面に入る可能性はあるものの、中長期的には高値圏での推移が続くと予想されます。
金に対する割安感も強く、分散投資先としての魅力は今後も継続するでしょう。
ただし、プラチナは景気変動の影響を受けやすく、価格変動も大きいため、投資する際は自身のリスク許容度を十分に考慮し、分散投資の一環として検討することが重要です。
プラチナの真の価値が見直されつつある今、その動向から目が離せない状況が続きそうです。

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