はじめに:記録的な高値を更新したプラチナ市場
2025年12月、プラチナ価格は1グラムあたり12,024円という驚異的な水準に到達しました。
2024年の最高値が5,492円だったことを考えると、わずか1年で2倍以上の急騰を記録したことになります。
この劇的な価格上昇は何を意味しているのでしょうか。
投資家や資産保有者の間で「プラチナ価格は今後どうなるのか」という関心が高まっています。
本記事では、最新のデータと専門機関の分析をもとに、プラチナ価格の現状と今後の見通しを詳しく解説します。
2025年のプラチナ価格:現状と最新動向
史上最高水準に達した価格推移
2025年12月23日時点で、田中貴金属工業の店頭価格は1グラムあたり12,024円となっています。
これは2008年以来の高値水準であり、過去の採掘実績から見ても歴史的な高値圏です。
国際市場では、ニューヨーク商品取引所において1オンスあたり2,200ドルを超える場面も見られ、2008年以来の記録的な水準に到達しました。
2020年のコロナ禍で3,000円台に落ち込んだことを考えると、市場の様相は完全に一変したといえるでしょう。
2025年10月以降の価格動向
2025年10月以降、プラチナ価格は8,200円から9,100円台を中心に推移しており、底堅い動きが続いていました。
11月には8,600円から8,900円台と高値圏での推移が目立ち、12月に入って一気に12,000円台へと急騰しています。
この価格推移から読み取れるのは、単なる一時的な投機ではなく、構造的な需給変化が背景にあるということです。
プラチナ価格高騰の4つの主要因
深刻化する供給不足
世界プラチナ投資評議会の最新レポートによると、2025年のプラチナ供給は需要に対して年間約30トン不足する見通しです。
これは年間需要の約12%に相当し、すでに3年連続での供給不足となっています。
主要産出国である南アフリカでは、2025年初頭に発生した洪水により複数の主要鉱山が操業停止を余儀なくされました。
その結果、年初からの生産量は前年同期比で13%もの減少を記録しています。
南アフリカは世界のプラチナ供給の約70%を占めているため、この生産トラブルは即座に国際市場に波及し、価格高騰の直接的な引き金となりました。
市場では2025年から2029年にかけて、年平均22.6トンの供給不足が続くと予測されており、この構造的な需給ギャップがプラチナ価格を強力に下支えしています。
中国を中心とした需要の急拡大
2025年第1四半期、中国におけるプラチナ宝飾品需要は前年比で15%増加しました。
4月の中国向けプラチナ輸入量は11.5トンと過去1年で最大水準に達しています。
この需要急増の背景には、金価格の高騰があります。
金が1グラムあたり2万円台に突入したことで、消費者がより手頃な価格のプラチナ宝飾品へとシフトしているのです。
中国の宝飾品メーカーや小売店も、利益率の高いプラチナ製品の販売に注力しており、この傾向は今後も続くと見られています。
さらに、中国の個人投資家によるプラチナインゴット投資も活発化しており、広州商品取引所でのプラチナ先物取引の開始により、中国市場の存在感はますます高まっています。
金との価格差による割安感
2025年8月時点で、金・プラチナ倍率は約1.2倍で推移しています。
これは金価格が急上昇したためであり、相対的にプラチナが割安な状況となっています。
歴史的に見ると、プラチナは金よりも高値で取引されることが多く、希少性だけで比較すれば、金の採掘量が約18万トンに対してプラチナはわずか7千トン程度と、プラチナの方が圧倒的に希少です。
投資家がこの割安性に注目し、投資マネーがプラチナ市場に流入していることが、価格を押し上げる要因の一つとなっています。
地政学リスクと投資需要の高まり
アメリカにおける経済および政策の不確実性が高まる中、投資家は高いリターンと分散効果を提供する代替資産としてプラチナに注目しています。
また、2025年には米国でプラチナ投資製品への関税強化の懸念が浮上し、短期的な需給のひっ迫や投機資金の流入が発生しました。
2025年第1四半期にはリースレートが1%から13%に急上昇するなど、市場の逼迫度が高まっています。
今後のプラチナ価格はどうなる?専門家の予測
短期予測(2026年1月~3月)
2026年1月にかけては、12月の急上昇の反動で、一時的に動きが落ち着く可能性があります。
しかし、供給不足が続いていることや需要が底堅いことを考えると、価格が大きく下がる可能性は低いと考えられます。
短期的には横ばいに近い動きとなる一方で、調整局面があれば新たな買い場となる可能性もあります。
8,000円台から10,000円台前半での推移が想定されますが、需給状況次第では再び高値を試す展開も十分にあり得ます。
中期予測(2026年~2027年)
アナリストの見解は概ね強気です。
2026年については、水素エネルギー開発の進展と自動車セクターの回復度合いによって、さらなる価格上昇の可能性が指摘されています。
貴金属市場全体が強気相場に入った場合、プラチナは2026年から2027年にかけてより顕著な価格上昇を見せる可能性が高いとの予測もあります。
国際価格では1オンスあたり1,250ドルから1,322ドル程度への上昇も視野に入れられています。
長期予測(2028年~2030年)
世界プラチナ投資協議会の見通しでは、2028年ごろまで世界的な供給不足が続く可能性が示されています。
特に南アフリカの生産量は回復しておらず、地上在庫も減少傾向にあります。
こうした状況を踏まえると、2028年~2030年にかけてのプラチナ価格は、現在の1万円超の水準を前提に、高値圏で推移する可能性があると考えられます。
供給不足が続き、中国を中心とした宝飾品需要や水素エネルギー関連分野での需要拡大が進めば、1万3,000円から1万5,000円程度を意識する局面が出てくる可能性もあります。
水素社会の到来がプラチナ需要を変える
水素エネルギーとプラチナの関係
長期的な視点で最も注目すべきは、水素エネルギー社会の実現に向けた動きです。
プラチナは、水素製造、水素貯蔵、水素輸送、水素利用の4大分野にまたがり、クリーンエネルギーに効率的なソリューションを提供する唯一の金属です。
プラチナベースの固体高分子膜技術は、グリーン水素を製造する水電解装置や、燃料電池自動車を動かす燃料電池の両方に使われています。
この技術は、エネルギー転換に欠かせない役割を果たすものとして、世界中で注目されています。
2040年には需要の35%が水素関連に
水素関連のプラチナ需要は2023年現在ではまだ少ないものの、2020年代を通じて大きく増えると期待されており、2040年までにはプラチナの年間需要の35%を占めると予測されています。
日本を含む多くの国が、水素を使った燃料電池車の普及を目指しており、それに伴って新たな需要が生まれています。
世界プラチナ投資評議会によると、世界の水素燃料電池自動車のシェアがわずか6%に達するだけで、年間約110トンのプラチナが必要になるとされています。
プラチナ価格に影響を与えるリスク要因
電気自動車の普及動向
プラチナ価格の最大のリスクは、電気自動車の普及ペースです。
完全な電気自動車にはプラチナがほとんど使用されないため、EVシフトが急速に進めば、自動車触媒用のプラチナ需要が減少する可能性があります。
ただし、2025年にEUが2035年までの内燃機関車禁止を緩和し、プラグインハイブリッドを認める提案をしたことは、プラチナにとって追い風となっています。
ハイブリッド車や水素燃料電池車では大量のプラチナが使用されるため、電動化のペースが鈍化すれば、自動車触媒用のプラチナ需要を長期的に支援することになります。
世界経済と金融政策
米国をはじめとする主要国の景気減速懸念が根強く、金利政策や金融不安が価格に下押し圧力を与える可能性もあります。
連邦準備制度の利上げ動向や、ドル相場の変動は、ドル建てで取引されるプラチナ価格に直接的な影響を与えます。
一般にドルが安くなると、ドル建てで取引されるプラチナは相対的に買われやすくなり、価格が上がる傾向にあります。
逆にドル高局面では、価格に下落圧力がかかることになります。
地政学リスク
プラチナの主要産出国は南アフリカ、ロシア、ジンバブエの3カ国で、鉱山生産の約90%を占めています。
これらの国々は政情不安、経済不振、労働問題、エネルギー不足といったさまざまな課題を抱えており、供給が不安定になりやすい特徴があります。
特にロシアが世界のプラチナ生産量の1割以上を占めているという事実は、地政学的リスクとともに価格の変動要因として無視できません。
対ロシア制裁などによって供給が制限されれば、需給バランスは一気にタイトになり、急激な価格高騰を招く可能性があります。
今がプラチナの買い時なのか?投資判断のポイント
短期的な利益確定を考えるなら
12月に急上昇した現在の価格水準は、短期的には買われ過ぎの可能性もあり、一時的な調整が入る可能性があります。
短期的な利益を重視する場合は、保有分の一部を売却し利益を確保しながら、残りは保有継続する段階的なアプローチが有効でしょう。
中長期的な成長を期待するなら
中長期的な視点では、買い時と考えられます。
水素エネルギー社会の実現により燃料電池車での需要拡大が見込まれ、供給不足の構造的問題は短期間では解決しないため、価格の底上げ要因となる可能性が高いからです。
投資を検討する際は、タイミングを分散する「ドルコスト平均法」の活用が有効です。
一度に大きな金額を投資するのではなく、定期的に一定額ずつ購入することで、価格変動のリスクを軽減できます。
インフレ対策としての価値
プラチナを含む貴金属は、インフレのリスクヘッジとしての機能があります。
現金や債券の実質価値目減りを懸念する場合、プラチナへの分散投資は有効な選択肢となります。
特に、世界的なインフレ傾向が続く中で、実物資産としてのプラチナの価値は再評価されつつあります。
金よりも割安な現在の価格水準は、長期的な投資家にとっては魅力的な水準といえるでしょう。
プラチナ投資の具体的な方法
現物投資
プラチナバーやコインを購入する方法です。
楽天証券やSBI証券、マネックス証券では、1,000円からプラチナの積立投資ができます。
一定の重量を積み立てると、実物として引き出すこともできます。
ETF(上場投資信託)
現物に裏付けられたプラチナETFを利用する方法が最も手軽です。
保管場所を必要とせず、スポット価格を追跡します。
流動性が高く、証券口座を通じて簡単にアクセスできるという利点があります。
先物取引
プラチナ先物契約は、より高いリターンを狙える一方で、リスクも高くなります。
市場規模が金や銀と比較して小さく、価格変動が激しいという特性を持つため、十分な知識と経験が必要です。
まとめ:プラチナ価格の今後の見通し
2025年のプラチナ市場は、構造的な供給不足と新たな需要拡大という二つの大きなトレンドに支えられています。
短期的には12月の急上昇の反動で調整局面も予想されますが、中長期的には高値圏での推移が見込まれます。
特に注目すべきは、水素エネルギー社会への移行という大きな流れです。
2040年までにプラチナ需要の35%が水素関連になるという予測は、プラチナ市場の将来性を示す重要な指標といえるでしょう。
投資判断においては、短期的な価格変動に一喜一憂することなく、これらの構造的要因を理解した上で、自身の投資スタイルに合った方法を選択することが重要です。
供給不足が続く限り、プラチナ価格は底堅く推移すると考えられますが、電気自動車の普及動向や世界経済の状況には引き続き注視が必要です。
「グリーン・メタル」としての新たな役割を担いつつあるプラチナ。
2025年5月以降の価格急騰は、その転換点を象徴する出来事として、今後の市場で記憶されることになるかもしれません。


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