隣が火事でも大丈夫な家は、なぜ現実には建てられないのか?

生活

近年、防災意識の高まりとともに「火事になっても燃え移らないような家づくりがしたい」と考える方が増えています。

特に住宅密集地での火災リスクを考えると、隣家とある程度の距離を取り、延焼に備える設計が理想だというのは、誰もが理解できることでしょう。

しかし――

現実には、多くの住宅が隣家との距離ゼロに近いような配置で建てられています。

では、なぜ「燃え広がらない距離の家」は理想とされながら、ほとんど実現されていないのか?

この記事では、その背景と、現実的な対策について詳しく解説します。

そもそも日本ではもらい火は補償されない?

まず大前提として、日本の法律では隣家からの火災で自宅が延焼しても、相手に重大な過失がなければ賠償されません。

これは「失火責任法(失火ノ責任ニ関スル法律)」という非常に短い法律で規定されています。

【失火責任法】

民法第709条にかかわらず、失火による損害については、重大な過失がなければ損害賠償の責任を負わない。

つまり、相手がうっかりミス(軽過失)で火事を起こしても、賠償義務なしというのが原則です。

さらに言えば、仮に「重大な過失」が認められたとしても、相手が火災保険に加入していなかったり、支払える資力がなければ補償は現実的に期待できません。

隣と距離を取った家はなぜ建てられないのか?

「じゃあ燃え移らないように、隣と距離を取って家を建てればいいじゃないか」と思いますよね?

しかし、それが現実的に難しい理由は、以下のように多岐にわたります。

土地が高すぎる

都市部では土地が非常に高額です。

たとえば東京23区では、1坪数百万円というエリアも珍しくありません。

そんな中で「隣と2~3メートル空ける」=空きスペース=無駄なコストという扱いになってしまいがちです。

結果として、敷地ギリギリに建てるのが当たり前という風潮が生まれます。

住宅密集地が多く、都市計画が追いついていない

戦後の高度経済成長期、日本ではとにかく「早く・安く・たくさんの住宅を供給する」ことが求められました。

その結果、防火よりも利便性重視の住宅密集地が大量に生まれ、現在も多くがそのまま存在しています。

古い町並みでは道路幅が狭く、消防車すら入りにくい場所も。

法制度・建ぺい率・容積率の制限

「建ぺい率」や「容積率」によって、建てられる面積に上限があります。

さらに、隣地境界線からの離隔距離や斜線制限もあり、「距離を取る」=「希望の広さ・間取りが実現できない」ということにもなりかねません。

多くの人が「防災より間取り」を優先している

現実的には、多くの人が家づくりで重視するのは以下のようなポイントです。

  • 広いリビング
  • 便利な水回り
  • 家族の人数に合った部屋数
  • 見た目のデザイン

「隣が火事になったら?」といったリスクは、実際に起きない限り“他人事”にされがちです。

現実的な防災対策はこれ!

すべての人が広い土地に余裕を持って家を建てられるわけではありません。

では、一般的な敷地条件の中で火災リスクを減らすにはどうすればよいのでしょうか?

省令準耐火構造にする

木造でも「火に強い構造」にすることで、延焼リスクが激減します。
さらに、火災保険料も大幅に安くなります。

防火仕様の建材を使う

  • 隣家側の窓に防火サッシや防火ガラス
  • 外壁に不燃材(窯業系サイディング・ALCなど)
  • 軒裏の通気口にも火止めを設置

火災保険を見直す

  • 自宅が燃えたときだけでなく、隣家からの延焼被害にも備える
  • 家財や仮住まい費用も補償範囲に入れておく
  • 個人賠償責任特約なども忘れずに

密集地を避けて土地選びをする

  • できるだけ古い木造密集地域は避ける
  • 防火地域・準防火地域の制限があるエリアの方が安心な場合も

まとめ:理想と現実のギャップを埋める知識と備え

「隣が火事になっても大丈夫な距離で家を建てたい」

これは理想ですが、土地価格・都市計画・制度上の制限などから、ほとんど実現できないのが現実です。

だからこそ、私たちができるのは、

  • 火災リスクを正しく理解する
  • 現実的な対策(構造・建材・保険)をとる
  • 万が一に備えて自分の資産を守る手段を確保しておく

ということです。

火事は「他人のせい」で起きても、「自分の損失」になります。

だからこそ、自分自身で備えることが、本当の防災につながります。

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